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システム部男子によるシステマチックな恋愛相談。 【背中で聞きます。アナタの情事に納期確保】

システマチック恋愛相談

「どうぞ、聞いてますよ」凄腕SEのHさんは言った。
こちらからは背中しか見えないのでその表情は読めない。真っ黒いディスプレイに映りこんでいるシルエットがゆっくりと揺れている。

「恋愛の案件ですね」

はい、ボクの相談というのが……

妙なコーナーを担当することになった。
システム部が恋愛相談に応えるという「システマチック恋愛相談」進行役として抜擢(?)されたボクは23歳の独身、新卒入社2年目、まだまだ勉強中の新人SEだ。
相談にのってくれるのは、システム部でもキャリアの長い、現在は基幹システムの開発進行管理を担当するHさん。あらゆる言語に精通する凄腕のSE、憧れの先輩社員だ。

●今回の相談
今回はボクの相談だ。シンプルかつ根源的で、究極の悩みなのだ。

【彼女ができません】

「・・・・・・」

Hさんは黙ってしまった。腕組みをしたり、あごに手をあてたり。時折、首をかしげながら、キーボードの上で指を動かしている。沈黙が正直、痛い。

「まず……」

はい。

「君が悩んでるのはそのキーワードで十分にわかったので、きちんと必要条件に応じて設計、というものをしてみましょう」

設計、ですか。

「例えばですね、金融系のシステムを開発する会社に対して、クライアントが、お金が貯まるような仕組みが欲しいです、と言われても困るでしょう。どうやってお金を貯めるのか、コストカットするのか、それは人件費の一部だ、じゃあそれぞれの工数を管理して無駄な箇所を見えるようにしましょう、ならこういうアウトプットが必要、こういうインプットがある、インターフェースは、データベースはこういう前提、じゃあ開発言語は、環境は、予算と納期も関係してくる、具体的に道筋を立てる必要があるでしょう」

なるほど!

「じゃあまず最終目標を設定してみてください。ゴール」

【かわいい彼女が欲しいです!】

「言い方を変えただけですけど、まあいいです。設計していきましょう。ここが甘いとロクなことにならないので。まずはどんな要件定義をしますか?」

要件定義。

「クライアント、ここでは君はクライアントでもありディベロパーでもあるんですよ。何を求めているんですか?」

えっと、かわいくて、やさしくて、いい匂いがして、、、

「趣味嗜好の話ではなくて。納品された成果物を通して、君は何をしたいんですか?」

えっ……、そんな、恥ずかしいです。

「それが設計が甘い、というのです。要件ははじめにきっちりと決めて、これを動かす際の厳密なルールも決めること。君はかなりアバウトにモノを言うので、プロマネ(プロジェクトマネージャー)が別でいたほうがいいかもしれませんね」

「あとは、聴覚的なことと心理的なことと、並列に扱わないように。嗅覚まで持ち込むのは正直どうかと思います。もっと言うと、妄想は仕様書に落とせない。先ほどの恥ずかしいです、のときのふしだらな妄想丸出しのしまりのない顔が、結局悩みの一番の原因なんじゃないかとも思いますが」

システム関係なく駄目出しされたような気がする! しかし設計が甘いのは確かにそうだ。

「あとは、どういう運用をするかだと思います。それも最初に定義するべきことですけどね、当然」

うっ、運用、ですか。

「ただそれは、奇跡のように納品が成った後の話ですけどね」

……結局ボクは、どうすればいいんですか!

「するべきことは、要件を絞ることですね。まずはひとつに限定してみてください。そこから逆算して、やるべきことをひとつひとつ設定すること。そして決めたら動かさないで、やってみてください。納期を設定して、コストを意識して。ダメなら、早々にあきらめて」

なるほど……。

「はい以上です。納期は確保してください」

・・・・・・

ありがとうございました。ボクはぺこりと、背中を向けたままのH先輩に頭を下げて、静かにその場を立ち去った。オフィスの外に出る。冬の空気が頬を冷やしていく。

要件を絞ること、かあ。

ため息をつく。白い息が一瞬で消えていく。

【いい匂いがすればいいや!】

鼻づまりの薬を購入するべく、ボクは夜の街に向け駆け出した……。

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今回のシステマチック恋愛アウトプット

【恋愛要件を絞り・動かさず・妄想し過ぎない】

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※このコーナーでは、皆様からのガチな恋愛相談を受け付けています!

ただしお答えするのは当社が誇る理系男子、システム部の連中「のみ」です。時に厳しく、時に優しく、時にぞんざいに、ドライに見えて実はウェットに、なかなかウィットに富んだ回答が期待できる(かもしれない)システマチック恋愛相談。

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アキミR5-D5

アキミR5-D5

2014入社♂SE【得意ワザ】鮨職、酒職、昼飲み希望、ベンガル語スコア990点。三方海に囲まれた南方出身でもカナヅチSEアキミR5-D5です。実は学生のときからゴーストライター&ウェブ制作で生計をたててました。最近は南西アジアのバングラデシュで3年間ICTに関わり、その後現職へ。

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