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当たり前の出来事も、仕掛け次第で大喜びのネタになる −− バイトレ代表・川村さんが語る「社長になるまでの道」

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協力:株式会社LIG
インタビュー:キャシー
撮影:ゆう
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バイトレ代表・川村さんが語る「社長になるまでの道」
“社長になる”そう決めて、本当に社長になれる人は、いったいどのくらいいるでしょうか。ましてや創業26年を迎えるグループ企業に入社して、代表取締役社長というポジションに就くことは、容易ではありません。その社長になる目標を入社から8年で実現したのが、株式会社バイトレ代表取締役社長の川村将臣さん。

川村さんは、東北の田舎町から大学進学を機に上京、大学を卒業後、2002年に新卒で綜合キャリアグループに入社、現在はグループ会社である株式会社バイトレで代表取締役社長を務めています。そんな川村さんですが、学生時代には数多くのアルバイトを経験したり、友達にドッキリを仕掛けて面白がるなど一見どこにでも居そうな雰囲気で、いわゆる「社長」という固いイメージはまったくありません。川村さんは入社してわずか8年という短い期間でいったいどのように社長に就任したのでしょうか。彼の学生時代の経験や働きながら学んだことを紐解きながら、社長になるまでの道のりを訊きました。

安定した人生の何が面白いの? 私が社長になれた理由

バイトレ代表・川村さんが語る「社長になるまでの道」
—「社長になりたい」という夢はいつごろから持つようになったのでしょうか?
就活を意識し始めたころです。父が地方公務員だったんですけど、仕事も給料も昇格降格関係も全部決まっている中で「何が面白いのかな」って思っていました。自分が就活する側になったときにそのことを思い出して、自分はチャレンジングな仕事をしたいなって思ったのがきっかけです。

ちなみに就活では最終面接で社長に、「いろいろな会社がある中でなぜうちを選んだんだ?」って聞かれまして、「読売ジャイアンツのような4番バッターばかりのチームに入って2軍で終わるなら、ロッテのようにバランス良いチームで4番になる方がかっこいいじゃないですか」って答えたら、「うちはロッテか!」なんて言われましたが、この会社に入って中心人物になるんだという決意はありました。

—「社長になる!」と新卒で入社して、それをなかなか実現するのは難しいことだと思います。実現するために意識したことはありますか?
とりあえず、余計なこと考えるのをやめました。入社した時に社長が例え話でよく言っていたんです。「試合に勝とうと思ったら勝つまでやればいい。やめた瞬間に負けなんだから、やり続ければ必ず勝ちになるんだ」って。その言葉にすごく感銘を受けて、多分ずっと折れずに続けていれば、徐々にチャンスが近付いてくると信じてました。ずっとやり続ければ何かが起きるということを自分に言い聞かせて、変な色気を出さずに、やるべき仕事をコツコツとやっていました。

私が社長になれたのは、いいタイミングで周りの仲間が背中を押してくれたり、周りの仲間の力が大きく作用していたような実感がありますね。

—新卒3年目に社長直下の部署に所属されていたとのことですが、そこで学んだことから、のちのキャリアに影響したことはありますか?
たくさんありますね。社長という仕事と一般的な仕事はもちろん全然違うんです。だから、同じ仕事一つにしても仕事の見方が真逆なので、まるで留学しているかのようでした。ね。経営者と社員だと、言葉では伝わるけどイメージが共有できないことがあるんです。前見て話しているのに後ろから叩かれるような、思いもしないフリがあったりだとか。そんなことが日々起きるんですが、社長も同じ人間ですから、いつか社長が語る周波数が一致する時が必ず来るんです。

その時に、「あ、これ繋がった!」「あれ、繋がった!」 というのが何個も連続して理解できたんです。その途中で『バイトレ』の社長になる話をいただいて。社長になってからも、「あ、あの時のアレはコレのことだったのか!」がこれか!とこれまで学んだことがリンクすることもあります。

若かりし頃の川村さん

若かりし頃の川村さん

—実際に社長になってから、社員の立場と社長の立場とでギャップはありましたか?
思い描いていた社長像と現実の社長像は全然違いますね。人間、都合のいいところしか見ない生き物だと思っているので。裏側にある泥臭い努力だとか、いろんな人間関係だとかメンバーとの付き合い方だとか、社長はゴール決める仕事だけじゃなくて、それら全部をやらなきゃいけないんです。その裏側に気付けたことで、「あの時の私の読みは甘かったな」とすごく感じることがあります。社長という肩書きをいただいてからは、急に白髪が増えました(笑)

日本では当たり前のことが当たり前じゃない。中南米を旅していたら、友人が警察に囲まれた。

バイトレ代表・川村さんが語る「社長になるまでの道」
川村さんの折れないマインドや前向きな精神は、どのようにして培われたのでしょうか。学生時代のお話を伺ってみましょう。

—川村さんは東北地方ご出身とのことですが、なぜ大学で上京されたんですか?
都会への憧れもありますが、「これから英語は話せて当たり前の時代が来る」と思ったので、英語の次に多く話されているスペイン語を身につけよう!と。スペイン語学科がある大学を探して都内の大学に進学しました。

私は小さいころから東北弁と標準語を喋っていたので、そういった意味でも外国語は勉強しやすかったですね。地元から離れると方言が恥ずかしくて標準語に直す癖が付いていたんです。今でも田舎に帰る時は、栃木県と福島県の県境を越えるあたりで言葉をチェンジするようにしています(笑)

—大学時代、実際にスペイン語圏に行ったりしたんですか?

コスタリカから南の方に繰り出して、中南米を放浪した経験があります。田舎の友達が休みを利用して「海外旅行がしたいんだけど語学が苦手だから」と僕のところに来たんです。彼が自分の力でタバコを買いに行きたいというのでスペイン語を教えたんですけど、買いに行っている様子をホテルのバルコニーから見ていたら、彼の周りが騒然としまして警察が彼を取り囲んだんです。彼が顔色真っ青にして戻ってきたので「どうしたんだ?」と聞いたら、「教わった通りにスペイン語を喋っただけだ」って言うんです。実は、私が教えたそのスペイン語が「マリファナより強い葉っぱはないか?」だったんですけどね(笑)

—確信犯じゃないですか(笑)

これは、私が彼らの反応を見たいがために、あえて危険な状況を作った話ですけど、まあ中南米では結構モノを取られそうになったり、そんなことばかりでしたね。そんな日常だったので、日本に帰ってきて自動販売機を見ただけで感動しましたし、なんでも手に入るコンビニのありがたさや手軽に食べられる吉野家は、なんて美味しいんだろうと。日本での当たり前が、海外では当たり前ではない旅の経験は、それまでの固定概念や常識を良い意味でも覆してくれました。

「1時間で700人来店するコンビニ」で鍛えられた学生時代

—川村さんは学生時代に多くのアルバイトを経験していますね。今までのアルバイトの経験の中で最も印象に残っているアルバイトはなんですか?
いろいろと経験しましたが、コンビニのアルバイトが一番思い出深かったです。霞ヶ関の合同庁舎の地下に入っているコンビニだったんですが、アルバイトなのに面接だけじゃなくて試験があったんです。平日の昼間は1時間で700人以上来店するようなコンビニだったので、お金貰ってレジを打つようじゃ遅いんです。高度な暗算力が求められるアルバイトで、頭の回転が速い人じゃなきゃ雇ってくれないようなコンビニでした。

場所が場所だけにお客さんも頭のいい人が多くて、会計が661円のときに1211円出してきたりとか。緊張感を持ちながら働いて、最後にお金合わせて1円もずれてなかったときの達成感が、一番面白いと思えた瞬間でした。

—アナウンサーを目指していた時期もあったとのことですが、人前に出ることが好きだったんですか?

中学高校時代はアナウンサーに憧れていて、野球中継の音を消して自分で実況して喋ってみたり、話す練習もしていたんですが、アナウンサーの仕事内容を調べれば調べるほど、自分が前に出てはいけない仕事なんじゃないかって気づき始めたんです。アナウンサーはアシスタント役が多いじゃないですか。なので、私の性格じゃ多分だめだなって思って諦めました(笑)

こういうお話をすると私が根っからの出しゃばりキャラのように思われますが、小学生の頃は人見知りでした。目立つといじめられたり、ミスした時も恥をかくし、後ろにいた方が楽って思っていたタイプで。でも、ある発表の時に前に出されて、そこでポツンと何か言ったら、それがすごくウケて。前に出た自分をみんなが受け入れてくれたんです。それから前に出て行っても、思っているほど周りは引かないんだなということに気が付いて、どんどん前に出るようになりました。

「土足で踏み込む」「同じ目線に立つ」まるで正反対な川村さん流の人付き合い哲学

バイトレ代表・川村さんが語る「社長になるまでの道」
—社長というと多くの人と付き合うことが多いかと思いますが、人との付き合いで日々心がけていることはありますか?

「本人に面と向かって言えない悪口は言わない」ってことですかね。変に裏表を作ることが好きじゃないので、陰口は言わないってことを自分だけじゃなくて周りにも言ってます。陰で「あいつハゲてるよね〜」じゃなくて、本人に「ハゲてますね!」って。あえて直接言うことで結構喜んでくれたりするものです。

—陰口とそうでないところの線引きをしっかりと心得ているように思います。うっかりすると人を傷つけてしまいそうに感じてしまいますが。

嫌いなタイプだろうなって思って引いていくと、もっと嫌いになるだろうなと思うので、土足で入っていきます。その結果、もっと嫌われたとしても更にもっと入っていくといつの間にか受け入れてくれるものです。そういうやり方で仲良くなっていますね。もし嫌われたとしても殺されるわけじゃないし、本当に嫌いだったら、口を聞かずに他人だって割り切っちゃえばいいだけじゃないですか。だから行けるところまで土足で踏み込んじゃおうというやり方です。

あとは、同じ目線に立つことが大事だと思っています。例えば、仕事が遅い人がその仕事を明日に回そうとしている時は「気持ちはわかるよ…」と一言いうだけで相手の態度は友好的かつ協力的になるんです。特に私の場合は、まさに“明日に投げちゃおう”タイプなので、社員もそれを知っているからこそ響くのかもしれませんが。しかし相手の目線を考えずに「今日中にやりなさい」とだけ言っても
「それはあなただからできることですよ」となります。みんなと同じ目線に立つことは、本当に大事です。

逆に、上から目線であったり、頭良さげぶっている人を見ると、やっつけたくなっちゃって(笑)横文字ばかり並べる人に対して、私も英語で応じながらわざと2~3個スペイン語の単語を混ぜたりするんです。そうすると「お〜」とか言って、知っているふりしてきたりとかして…わかるわけねえだろ!って(笑)

「丸くなろう、でも尖ろう」社長になった今、社員に伝えたいこと

バイトレ代表・川村さんが語る「社長になるまでの道」
—社長として、社員たちに伝えたいことはありますか?

もしかしたら相反する話になるかもしれませんが、尖っていることと丸くなること、両方持っていてほしいです。尖っていてほしいというのは、やりたいことを明確じゃなくてもいいから大きい声で言えば良い。偉そうに生意気にもっと振舞ってみろということです。丸くなってほしいとのは、最近すぐに心折れてしまう人が増えている気がするので「いいから我慢しろ、明日きっといいことあるから、まずは嫌なことがあっても続けようぜ」ということ。

我慢する部分と突っ張る部分の両方を持っていてほしいんですよね。ただ続けることだけをやっていると単なるイエスマンになってアイデンティティーのない人になってしまうので、「自分はこういうことをしたいんだ! こうなりたいんだ!」というのも同時に養成していってほしいなって思います。それを一つの単語でうまくまとめられなくて、言葉にすると軽くなってしまうかもしれないんですけど、まず「楽しければそれでいいじゃん」と気軽な気持ちをもっていてほしいんです。本当に。

—社員のモチベーションを上げるために意識してることはなんですか?

当たり前の出来事も、仕掛け次第で大喜びのネタになると思っています。仕事は、基本的に同じことの繰り返しで地味じゃないですか。だから、派手に見せる仕掛けを私が作ってあげることだと思っています。

“組織を作る”ということは“舞台をやる”ようなものだと思っていて、トップである社長は舞台監督と同じなのだと思っています。社会という舞台で演技をして、誰かに見せて楽しませるのが仕事です。見せるということは、相手に見られることだから、恥ずかしいことになるかもしれませんが、演技していること自体を楽しめるような物語にしてあげたいと思っています。そうすると彼らは喜んで、自ら動いてくれます。仮に入り口で、低レベルというレッテルを貼られた人でも、戦力化が図れてくるのだと思うんです。

インタビューを終えて

仕事に対して「楽しければそれでいいじゃん」という川村さんの言葉がとても印象的でした。一見軽そうな言葉ですが、この言葉にこれほど深い意味を感じたのは初めてかもしれません。
川村さんは根っからのエンターテイナーであり、どんなに困難な状況も楽しい出来事に変換してしまう発想力で、周りの人々の日常を輝かせているのでしょう。「一緒にいると楽しい」そう思える人に人が集まってきて、一つの組織が出来上がるのだと思うと、川村さんが社長になれたことに一種の必然性を感じました。どんな状況においても“楽しむ”努力をし続けること。そして、諦めずに“続ける”こと。この二つの言葉の力を改めて認識させてくれるような存在ですね。

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雄たろう

雄たろう

2011入社♂クリエイティブディレクター【得意ワザ】、、、女子が絡む失敗、珈琲マイスター、 依頼は断らない。人にやさしく、自分にはとことんSクリエイティブディレクター雄たろうです。デザイン一筋、地味な仕事、泥臭い仕事、人に言えない仕事を経験してきたため裏では常に危機感と向上心とねちっこさがウリです。

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